「つきぬけて 天上の紺 曼珠沙華」
山口誓子の俳句です。秋になるとこの句を思い出します。
刈り取りの終わった田んぼの畦に、お彼岸の中日のころになると待っていたかのように彼岸花がすっくと立ち上がります。抜けるような青空と、燃えるような花びらが、透きとおった秋の日差しの中でくっきりと対峙しています。
太宰治は小説『富嶽百景』の中に、「富士には月見草がよく似合う」という有名な一節を残しましたが、私はそれを真似て、「紺碧の大空には彼岸花がよく似合う」とつぶやいてみました。
今年は、お盆を過ぎてからの天候が不順で田んぼの乾きが悪く、コンバインが思うように入れないため、お米農家は皆苦労されたようです。
また、この夏はセミの鳴き方にも異変が感じられました。アブラゼミが異様に少なかったのです。さらに、秋の風物詩といってもいい赤とんぼの姿があまり見られません。
やはりなにか変です。
この美しい田舎の自然が失われることのないよう、真剣に考える時期が来ているのではないでしょうか。